芽吹きの季節だからこそ痛む

修道院上の森

 世界が光を失って、自分の中の時間の流れと体の外の時間の流れがずれてゆく感覚を遺族は味わう。一日は自分の感覚とは遠いところで始まり、日はいつの間にか昇り、また沈んでゆく。季節の巡りもまた体の外を巡ってゆく。その中で芽吹きの季節はことさらに辛い。自然が息を吹き返し、新しい命が目に見える形で育ってゆく中で自分の愛するものがもはや失われたまま戻ってはこない。そのことを思い知らされる。特にこのみどりの季節に旅立っていった家族を持っている方たちの苦しみは深い。一番美しい季節に、新しい命へと旅立っていったのだと思うのだけれど、五月は鎮魂の季節でもある。心の奥深くの扉を開いてひっそりと心の中に光を招きいれよう。