母が死んじゃいそうになった
慌てて駆けつけて、ただじっと見つめていた。
この人から生まれた
この人が生もうと思ってくれた
この人が守ってくれた。
この人に抱かれた
この人が祈ってくれた
この人が見守ってくれた
この人の心はいつも私の中にあった
そのことをどうやってこのひとにつたえたらよいのだろうか
もう少し生きていてくれたら
私のことをすべて忘れても
もう見分けがつかなくなっても
私の中に生きている命と
この人の中に生きてきた時間は重なっているのだから
あきらめることも
むなしい思いも
悲しみさえも
消えていくのだろうに
母は死ななかった。
ひょうひょうと
自分のベットに戻ってきた
体は戻ってきたけれど
心はどこを旅しているのだろうかと
私の寂しさがつぶやく
心はこんなにも近くにいるのだに
それは触れないくらいに近くにあるのだに
わが身のうちにあるのだに