母が死んじゃいそうになった

mugisan2017-02-24

 慌てて駆けつけて、ただじっと見つめていた。
 この人から生まれた
 この人が生もうと思ってくれた
 この人が守ってくれた。
 この人に抱かれた
 この人が祈ってくれた
 この人が見守ってくれた
 この人の心はいつも私の中にあった




 そのことをどうやってこのひとにつたえたらよいのだろうか 



 もう少し生きていてくれたら
 私のことをすべて忘れても
 もう見分けがつかなくなっても
 私の中に生きている命と
 この人の中に生きてきた時間は重なっているのだから
 あきらめることも
 むなしい思いも
 悲しみさえも
 消えていくのだろうに



 母は死ななかった。



 ひょうひょうと
 自分のベットに戻ってきた
 体は戻ってきたけれど
 心はどこを旅しているのだろうかと
 私の寂しさがつぶやく



 心はこんなにも近くにいるのだに 
 それは触れないくらいに近くにあるのだに



 わが身のうちにあるのだに