薬師寺の宝物

ドラえもんがドラムをたたく

 被災地であることでこのような恩恵に浴することができたと思う。吉祥天女にお目にかかった。そしてかわいらしい六地蔵様にも。カトリックの私が、無性に懐かしいと感じて吸い寄せられるのは幼児体験だと思う。幼いころの遊び場は大きなお寺と神社だった。あの空間が心のふるさとかもしれない。心が静かになる。


 黒闇天という醜くて、人の不幸をつかさどる天女の妹がいて、福をもたらす天女と対でやってくる。福だけというわけにはいかないという。なんとまあ・・・・・。そのほうが納得がいく。幸せだけがやってくる状況はきっと怖いだろうなと思う。人生はうねりながら過ぎてゆく。そしてその中で人は自分の中の醜さや、豊かさを知って人間としてのありかたを学んでゆく。その昔、薬師寺高田好胤師のお話を伺ったことがあった。今日は若い主事さんのお話だったけれど洒脱な語り口は薬師寺の伝統なのかもしれないな。

 東北各地から博物館にやってこられた方たちで駐車場は大変なことになっていた。わざわざウィークデイを狙ったのに各地から車やバスでやってくる人がこんなにもたくさんと思った。福島から来たという方たちがたくさんおられた。手を合わせてじっと立ち尽くす姿があちこち見られて、普通の美術展とは異なる空気だった。ミュージアムグッズのお店はさながらイベント会場みたいで、しかもあまり慣れていない方が多くてレジの行列がなかなか進まないし、どこがしっぽかわからないので困った。それでもみんなの顔が穏やかになっていくようでうれしかった。機会があればもう一度静かに対面したいと思う。