風が冷たい

モノクロで夕陽

 もうすぐ木枯らしが吹く。そう思いながらな残りの秋がいとおしいと思う。11月は人の心をかき乱す月らしい。夏の身を焦がすような暑さの中で見失ったもののかけがえのなさを、改めて風の中に感じ取ってしまう。もう大切な者はいないのだと思う季節だ。冬の前の一時の静まり返った季節。否が応でも自らの心の中を感じ取ってしまう敏感さ。秋が過ぎて冬が来るとき息をひそめてこの空虚に広がる秋の音を聴く。それが残されたものの勤めのように。