天職

 先日、知り合いのシスターと立ち話をした。本人は気が付いていないけれど、周りから見るとそのためにこそこの人は生まれてきたという人がいるそうな。不思議なことにほとんどの人はそう思っていない。あたかも自分の意志だけでそこに立っているように思っている。
 だけど一歩離れてその人の人生を見るとささやかな小さな出来事の積み重ねで微妙な変化を重ねながら今のこの場所に立っている。そこには神の計らいがある。そのことに人は生涯をかけて気づいて行く。人生の意味を知ることはもしかしたらその人自身は生きている間にはないかもしれないが、旅立ちの最期の一瞬ですべてを知ることも多い。嗚呼、このために私は生まれてきたのだとわかる。それは寄り添っている者には感じ取れる、激しく胸を揺さぶられる。神の御計画を垣間見させていただくことに恐れを感じる。そして思う「土の器」を用いられる神のみ手の技を。
 天職。その命に託されものの名前を知ろうと知るまいと、それは成ってゆく。天職というものは本人には知らされなくてもその役割を果たすものなんだと思う。