赤毛のアン

 昔、一人の女の子がいた。赤毛のアンが大好きで、カナダが大好きになった。いつかその国で暮らしてみたいと思うようになり、結婚してカナダの国籍をとった。そして去年の五月カナダの土になった。私の小さな妹。彼女が旅立ってちょうど一年たつ。今空のどこを旅しているのだろうか。

 ANNEのように夢を実現する賢さと、忍耐を持っていた彼女だからきっと今は天国で父と母に出会って楽しい時間を過ごしているだろう。人は生きて、旅をしてやがて神のもとに帰ってゆく。彼女は幸せだったと思う。自分の夢を実現して自分らしく生きて死んだのだから。ああ・・・・ただ残されて一人になった私はたとえようもなく寂しい。もう育った家族の思い出を分かち合う人がいない。

 ANNEの本を彼女に贈ったのは私だった。二人で夢を見た。そして私だけが残って、夢のかけらを握りしめている。たぶんもう少し私はこの旅を続けるだろう。曲がり角をいくつも曲がって生きてきたから、今また新たな道を曲がることに恐れはない。