あちこちで卒業式

 街を車でゆくと、卒業式帰りの学生を見かける。まるでお約束のように女の子は振り袖に袴、男の子はブラックスーツ。我が家も和服に袴だったけれど、それは急激に体型が変わってしまい、洋服が合わなくなってしまったから。本人は元の体型に戻すというが卒業制作の無茶なスケジュールで変わってしまった体格を元の形に戻すのは時間がかかる。気長にコントロールするしかない。そう思っての急遽の和服だったのだが、ごく当たり前の式服になってしまった。
 今は小学校の卒業式まで和服が当たり前になってしまった。ふだん、着物とは無縁に暮らしているから、美容院で着付けをしてもらうらしい。そして髪型も流行りがあるらしく、なんで?と思う形。まるで夜のお姉さんみたいな崩し加減の髪に大きな飾りをつけて,襟元も大きく抜いて学生の卒業式という着付けではない。学生の袴姿は襟元をきちんと抜かずにきりりと仕上げるものだ。
 昨日もそう思った。今日もまたそう思った。流行りかどうかは別として、着付けには品格と目的がある。パーテイではなく、厳粛な式典だということをわきまえて着付けをするべきだね。何も知らずに着崩した雰囲気で参列しているのは気の毒だと思った。私は、昔スタイリストをやっていた時期があって、着物の格や小物、髪型との組み合わせ、着物と帯の格と、着るべき場所の組み合わせの約束事に神経をとがらせていたから、なおのことこの頃の美容院の着付けのめちゃくちゃさ加減と、品位のなさには辟易する。おしゃれであることと、約束事、基本を守ることは相容れないものではない。高いお金を払って、場違いな格好をさせられるお客さんは気の毒ではないのか。