緑が豊かな

欅の葉がすっかり落ちた

 静かな佇まいのけやきの並木だけれど、葉がすっかり落ちてしまって、黒く手を伸ばした木肌がくっきりと見える。それもまた木の姿が美しい。
 足元には草地があって、つぐみが餌を探していたり、ひょいっともずがいたりする。花が咲いたりもするし気をつけて毎日見つめていると、季節の変わり目がはっきりわかって楽しい道だ。
 この街にはこんな並木道がたくさんある。ここはけやきだけれど、ハナミズキの並木や、プラタナスや、銀杏や、ヤマボウシや、辛夷、ああ、とにかく季節ごとにただその道を歩くだけで幸せな気持ちになれる並木がたくさんある。
 この街を作った人はきっと何十年もたった時のこの街の姿を夢見たんだろうな。それでも、いいことばかりではない。実が落ちて車道がスリップしそうで危険だったり、落ち葉が舞い散って掃除が大変だったり、その近所の人や市の道路下の負担は大きいと思う。
 それでも樹木があることが嬉しい。手入れにお金がかかっても、この街から樹がなくなったら、わたしたちの心はきっと殺伐とするだろう。震災の後、春が来て今まで見たこともないような緑の若葉の美しさに、ああ生きているんだと思った。同じ季節のめぐりが淡々と訪れただけなのに、あの若葉の色は、生きていく勇気を感じさせた。