自分に優しくしてみた

 仕事が終わった時、ふと思い立って新しい靴を買いに行った。足を包み込むタイプのしっかりした靴を買った。足元を固めたかったんだな、きっと。価格は今払える自分の予算ギリギリ。このところ使い過ぎかね。ハルクス・バルガスはこの季節とても足が痛む。足で歩かなければ訪問はできないからいい加減な靴は履けない。いざとなったらダッシュで逃げなければならないことだってあるから。住宅の階段を5階まで登りながら、エレベーターのないこの建物に老いた人はどうやって住むのかと思った。訪問先の○さんはまだ若くて、一日に軽く50キロは歩く人なので私が息を切らしているのを面白がる。そのうちきっと軽やかに駆け登ってみせるからねと私は笑う。
 帰り道は夕日が綺麗だった。出先の駐車場で合流するために親分を待っていたら同僚のペケちゃんに「どしたの?帰り道忘れた?」と聞かれた。事情を話すと「愛だねぇ」と笑われた。返す言葉も無く「そう来るか」と私も笑う。 なんだか長い一日が終わった。最後の仕上げが靴屋さんだった。