今日は本当は忙しいのに

夕空に浮かぶもの

 体はめちゃ忙しいのに、気分はのんびりとして働いた。まるで毒気が抜けたみたいに緊張しないでスムーズに淡々と仕事をこなした。それは仕事の内容がディープ過ぎたから、重さを飛び越して安定するために気持ちを解放したから。ミスが許されなかった。時計を見ながら今できることを正確にこなしていった。緊張を要する仕事にはそれが一番の早道だと知っている。
 一人の人の生活を立て直すのに、複数の機関と人間が関わって知恵を出し合う。その時お互いのベストを尽くすのは当たり前のこと。困難な行き詰まってしまった状況をどう救済してゆくのか。自己破産は最後の手段。その前に本当になすべきことはないのか。考えられることはないのか。社会資源はないのか。見えていないことはないのか。ギリギリと詰めてゆく。過去にすでに自己破産をしていたことが明らかになってゆく。
 生きるってこんなに大変なことなんだよ。そんなに簡単に投げ出してはいけない。心からそう思う。そしてほんの一筋の道が見えたら、まず命はつながる。
 事務所に帰ったら、私の担当している方が緊急入院していた。この間から何か危ういものを感じていて、訪問のたびに、その旨をヘルパーにも関係機関にも伝えてきたけれど、もう持ちこたえられる状態ではなかったらしい。施設入所の手続きを始めていただけに関係者一同改めて先を急がねばと思った。安心して暮らせる場所を緊急に探さなければ退院ができない。