春から夏へ

光が雲から降りてくる

寒かったリ、暑くなったりさっぱり訳の分からないこのごろの気候だけれど、少しずつ夏の匂いがする。私が一本の樹だったら、今頃は腕を伸ばし、大地に深く根を下ろそうとしているだろう。枝分かれした先の方に光を感じて芽吹きの葉を広げていくだろう。風が過ぎてゆくのを肌で感じながら花を開いてゆくだろう。きっと体のあちこちに虫や小さな獣やトリたちの気配を感じるだろう。そしてそれは限りなく喜ばしいものとして体中で感じ取っていくだろう。
 私は一本の木だ。そう思って体の隅々まで空気を感じ気配を感じることは私を解放してくれる。