ほんの少しだけ

自分に優しくしてみようと思った。
こんなに健気に生きてきたのだから、
少しだけ優しくしてあげたっていいではないかと思った。
誰かに優しさをくださいと願ってみても、
人は自分の一日のことで精一杯だ。

誰かが
私が求めて指し伸ばしている手に気がつくのは
随分後のことだろう。
いなくなってしまったあの人が
あの時差し出していた手の切なさを、
私はいま気がついている。


いつも優しさは遅れてやってくる。
間に合わなくなってから、
人は自分がやらなかったこと達の囁きを聴く。

だから

私は私に優しくしてあげよう。
ほんの小さなことでいいのだから。