理科室のオルガン

消えてゆく大好きな場所

気になっていたユニークなカフェ。何時かこんなカフェを親分と開いてみたいなって、心の中で思っていた。好きな場所が叉ひとつ、なくなってしまった。閉校ご案内が出ている。2009年からほんの短い間の開校だったようだ。熱烈なファンがいて、皆が自分だけの隠れ家だと思っていた。そんなカフェがこの街には沢山あるらしい。
 いつか、やってみたいと思うことを暖めていると、心がふわんと温かくなる。優しい気持ちになれるのは嬉しい。この街にはそんなつつましくも暖かな場所を提供している人たちがいる。声高に何を訴えるでもなく、疲れた人も、ちょっと一休みの人も、これから出かけてゆく人も、ほんの一息つける場所。お金持ちにはならなくて良いけれど、自分が誰にも気がね無しに、誰かに場所を提供できるのなら、それはとても嬉しいことだと思う。
 癒しとか、安らぎとかそんなうたい文句はいらない。ただ其処にいるとくつろげる。泣きたいときは一人でないていてもいい場所。いちいち関わられないのに孤独ではない場所。そんな場所を私が作ることが出来たら、残っている時間を豊かに暮らせるのかもしれないなと、この小さな場所の閉鎖を見て思った。