去ってゆく

 ポツリポツリと友人知人が去ってゆく。この地方に見切りをつけて遠くの町に転居してゆく。ある人は転勤願いを出し、ある人は家屋敷を整理して去ってゆく。送別会をカレンダーに書き込みながら、去ってゆく人の気持ちを思い、去られる自分の心を思う。
 夢を見ることが辛い土地、思い出したくないことが起こってしまった街、大切な人の命を奪った海・・・・
 引き止めることは出来ない。去る人の気持ちを推し量ることはしない。わからないことが沢山あるから。私たちは自分の気持ちだけで動くことが出来るほどしがらみのない存在ではない。いろいろな物が入り組んで絡み付いて思うに任せないのが人生だ。


 一緒に仕事が出来た時間を覚えている限りあなたは私の傍にいる。何時か叉どこかで会うことが出来るかもしれない。兎にも角にも今ページがめくられて新しい物語が始まる。私たちは何がそこにあるのかわからないままその物語を生きてゆく。人生って不思議なものだ。頁がめくられることに不安よりも希望を感じるのだから。より死に近づいていくというのに何と穏やかな気持ちなんだろう。