あきれた

隣のビルに寄りかかり

 NHKの報道番組で避難所でインタビューした人間が家族を失った人に向かって
「今、会ったらなんと言いますか」と聴いた。あきれて唖然として、怒りで身が震えた。この人に限らず、質問者の無神経振りが目立つ。津波に襲われた人に対して「その時どんな感じでしたか」緊急時に命からがら助かった人に対して、身内の安否のわからない人に向かって、配慮が無さ過ぎる。感情を封じ込めることでかろうじて生きている人の記憶を一気に開かせて、どのようにその後、その人の心を安全に閉じようというのだろうか。カウンセラーであれば決してそんな無謀なことはしない。せめて被災者心理の基本を叩き込んでから現場に立って欲しい。
 無神経な人間はこの場所にいる資格が無いと、私は思う。避難所訪問での馬鹿な質問をやめさせて欲しい。ただ被災者の支援への希望と、もし誰かを探しているのならばそれをしっかりと報道して欲しい。余計なコメントも、余計な質問もやめて欲しい。


 災害学の権威が、「もっと早く海からの輸送を考えるべきであった」といったがその時、港がどのような状態であったのか、津波でどれくらいの物の山が港内に打ち上げられ港湾が埋まっていたのか、必死の回復作業の結果があの時間の回復だったのだと、この人はわからないのだろうか。その場の思いつきで、過去の事例や体験をつなぎ合わせて、今の状況をあれこれ評論したりアドバイスするのはやめて欲しい。
 グローバルに考え、観察し、きちんと分析して物を言う専門家であって欲しい。部分的な専門家は何も言わないで頂きたい。


 現場は、今出来る最善を尽くしている。それが学問的に、最上の策でなかったのには、現場にそれだけの理由と状況がある。そこを指摘するのならば、なぜそういうことになったのかをきちんと分析して、社会一般が理解できる形で示して欲しい。それは出来るはずだと思う。今。ここで起こっていること、現場を見て物事を言って欲しい。それでなくても人々は生活に疲弊している、ささくれた気持ちに塩をなすりつけることはやめて欲しい。家族を避難所に置いて、壊れた自宅において、必死で復旧作業をしているのは被災者の夫であり、父であり、兄であり、隣人であるのだから。