避難所

 少しずつ、次の場所に移動し始めている。ある人は県外に脱出し、ある人は他の場所に。仮設に申し込む人も、自宅再建に取り組む人もボツボツ出てきた。その中で家族を失って、もしくは未だめぐり合えなくて、気持ちが取り残されたままの人がいる。こういう人にどう寄り添うか。自分と周りの人の時間の流れの差が生きる力を奪ってゆくことがある。 引きこもれるうちは未だよいが、引きこもることを許さない時間の区切りがある。その時が怖い。今は、もう少しゆっくりと時間が流れて欲しいと思う。せめて心にかさぶたがはって血が固まるくらいの時間をと思う。
 先へ、先へと走らせないで。避難所は同じ境遇の人が身を寄せ合うことが許されている場所。その中でさえ、時間の経過で以前持っていた社会的な差、こんな違いが出てきて、皆同じという最初の平等感は薄れて、今、差別化が始まっている。そろそろ、心の問題が起き始める時期だ。避難所にかかわる人も、避難する人も、支援する人も、その周りの人も、まったく被災していない人がいない状況で避難所は運営されている。ささやかな心の温度差が、疲労と無力感と不安に増幅されて怒りの形を取ることがある。運営の難しさはこれから表面化してくるだろうと思う。