微笑んで

 気持ちが荒むとき微笑んでくれる人がいるとホッとする。凍えた気持ちがほぐれてゆく。午前中のケースはとても苦しかった。深い穴に落ち込んだみたいに何も見えない。生きるためのハンドルが見つからない。そんな時、突然赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。しかも一ヶ月未満の新生児の泣き声。思わず二人で顔を見合わせた。そしてなんだか分からないけれどその人のほほに暖かい涙がほろほろとこぼれてきた。胸が熱くなった。そして私はふっと微笑んだ。流れが変わった。あの泣き声はどんな言葉よりも、薬よりもちからがあった。凍っていたその人の気持ちが緩やかに溶けていった。