ひこうき雲

 この曲を友人が贈ってくれた。ユーミンのデビュー曲で、自死でなくなった同級生をテーマにした曲。17歳の死だった。この歌を知ったとき聞いてみたいと思った。だけれど買う気力が無くて詩だけを書き写して何時かめぐり合うこともあるだろうと思った。CDの表題は別の歌だったし、歌い手も別の人だったのでタイトルを見て気にはなったけれど、似たような歌は沢山あるからと思った。
 仕事で移動中、不意に聞き覚えのあるフレーズが流れた。繰り返し、繰り返し聞いた。そして,私にこのCDをくれた友人に感謝した。いつまでも私は買うことはできなかっただろうし、忘れることもできなかっただろう。さりげなく贈られたからこそ聞くことができた。
 今、こんな歌がいくつかある。浄土真宗の尼僧でシンガーソングライターの方が歌っているものもある。分かる人にしかわからない、普通に聞いても美しい歌だけれど、関係者が聞いたら胸に響きすぎてうずくまってしまったなど、それが街角で流れていてひょいと聞こえてきて、身動きが取れなくなった事例などにぶつかる度に,遺族の大変さを思う。外からの刺激を最低限にするために耳にイヤーホンをつけ片時も音響機器を離さず暮らしている人もいる。
 一人一人の「語られない・語ることのできない事情」を感じ取りながら、支え手としての私もまた、自分の心を守る事を大切にしようと思う。誰に対してもいい子でいることはできないのだから。