花を活けた

花にも花の慈しみが


なくなった家族のことを思い出す日
話を聞く日
語り合う日
悼む日


一人一人の生きた時間を、
見知らぬ人々が
心の扉をほんの少し開き
浮かび上がってくる思い出を掬い上げ 
こぼれることばを
紡ぐ


それぞれの中で織り上げる布は
誰の目にも触れず
心の中に  
たたみこまれてゆくだけ



いつの日にか
沈黙の布は
織り上げた模様を
天に返すのだろう
風に花びらが舞うように

淡く染まった
花を
幾本も束ねて
私は
愛しい者たちの遺影のそばに置く