夕べ帰宅して

 郵便受けを見たら、中学時代の恩師がまた本を出版なさって、送ってくださった。後一冊でこのシリーズは10巻になるという手紙が添えてあった。この人との出会いがあったから私たちは豊かな中学時代を持てたのかもしれないと思った。人の心にしみこむ優しさと背筋を伸ばさねばその前に立てない厳しさを併せ持った教師だった。私が書いたものを送るたびに「あなたは、何時の間にこんなに物事を深く考えることが出来るようになったのでしょう」と真顔で言われる。戸惑ってしまう。彼の前に立つと私はいつも中学生の自分に戻ってしまう。そして思う。私は何も変わっていないのに。