ターシャ

 行ってきました。最終前日ということで混んでいました。展示そのものは絵本の原画、ワンピース、食器、マリオネットとぬいぐるみ。よく写真で見かける紅いテーブルクロスをかけた入口の光景の再現。確かにこれもターシャではあるけれど、あの厳しいバーモントでの一人暮らしが何故こんなにも魅力的に語られているのか、彼女が働きながら子供を育て、自分なりの生き方を社会のなかで確立していくことを可能にしたものは何なのか。才能があった、意思が強かった、それ以外にも彼女が持っていたパワーは何だったのか。生きたいという強さが失われつつある今だからこそ、私は知りたいと思う。ターシャに初めて出会って絵よりもその生き方に強く引かれたのは、今からはるか昔のこと。グランマ・モーゼスとの出会いも同じころだったと思う。まだ少女だった私をひきつけたものはまさに彼女達の生き方そのものだった。私も魔女になる。こんな風に人を魅惑する、人にいのちを感じさせる生き方をしたい。そう思った。 その時から長い時間が過ぎて、私ももう魔女になっても年に不足はない。なのにまだなれずにこうして迷いの中にいる。恐らくターシャはその迷いを感じさせないほどに毅然と現実に向き合って生きたのだろう。単純に朗らかに。
 彼女のパレットを見て彩度の低い混色の多いことに改めてその複雑な心を見たように思った。トレースを多用して描く細密な下絵と、混色のパレットには相通じる繊細さが感じられる。私はもっとシンプルな混色を想像していただけに、少し驚いた。それは草木染の色にも似た複雑な色合いだったから。
 遅い昼食の後、パン屋さんでお気に入りのナッツパンを買った。喫茶コーナーでグレープジュースを飲んで勾当台公園で蛙ちゃん夫妻と落ち合い、公園内でを写真で撮ったりまったりと過ごす。帰りに家に寄ってもらい一緒に親子丼を作って食べた。穏やかなお休みの一日だったな。