今日は

修道院の中庭

 ショートステイが終ってやっと戻ってきた一人暮らしの方。心臓に難アリでこのところ入退院を繰り返している。身寄りがないのでヘルパーや福祉関係者に守られながらの一人暮らし。今日訪問したらしょんぼりしている。訳を聴くと大家さんにやんわりと出て行って欲しいと言われたらしい。本人も気にしてショートステイ先の職員に「ここに荷物を持って越して着てよいのか」と聞いたそうだ。
 いずれ生活環境を移管するための準備としてのショートステイなので遅かれ早かれ慣らしの時期が終れば引っ越すことになるが、本人からのいきなりの話で戸惑う。何があったのかをたずねたら、大家さんとのやり取りにたどり着いた。「あなたはどうしたいの?」「ここにいたい。」「ならば大家さんの気持ちを聞いてくるから」といって大家さんを訪ねた。イロイロ不安はあってもまだ近所に迷惑をかけることもないし、ヘルパーが介護に毎日朝と晩に入って様子を見ているし、もう少し一人暮らしをさせて、ゆくゆくは施設入所を考えていると話す。家賃もきちんと払っているし尽くすべきことは尽くしているのだから今すぐ追い出すことは出来ない。なんとかもう少し猶予を頂くことに成功して本人に伝えると、「ああよかった」と喜ばれた。
 年をとって今まで住み慣れた場所から出て行かなければならないことは辛いことだろう。たとえそれが借家であっても我が家に変わりはないのだから。老人の独り暮らしは甘くはないなあと思った。本人が幾らしっかり暮らしているつもりでも周りのハードルは高い。出来る限りの形で補っても、もっともっとと要求され、それに見合わなければこの地域から出て施設に入ってくれという。近所の人が自分の生活環境をかき乱されたくないから。地域エゴと思う。地域で独り暮らしの老人を抱え込んで見守って生活してゆくことは最早この国では御伽噺なのだ。いつか自分もそうなって行くだろうに。子供と年寄りが不幸せな国はいつかきっと滅びてゆく。