やっと連絡が取れて

冬の名残の雲の形

 午前に「これから遺体を引き取りに行きます」と連絡が入った。亡くなった事情を淡々と話される様子に胸が痛む。二ヶ月の入院期間の間この人はどんなにか胸を痛めたことだろう。看取っているだけで、もうすぐ死んでしまうであろう最愛の人に何もしてあげることができない苦しさ。お年がお年だけにどこまでの医療を施すのかの決断もあったであろう。今は緊張しているから悲しみはその入り口。これから時間と共に襲ってくる哀切感を受け入れてゆく作業が始まる。その時私たちが寄り添ってあげられるのか。年月を経た夫婦にはその年月の長さだけの歓びと悲しみがある。慰めは無力だ。
 季節のさきがけの真っ赤なイチゴを箱で買って持っていった。せめて自然の力に慰められますように。甘い春の香りは辛かった冬の終わりを教えてくれると思う。
 今は天国に帰ってしまった息子と再会の挨拶をしているかもしれないな。あの子の清らかなお骨をこの方は涙を流しながら拾ってくださった。もしも、おじいちゃんがそこにいたらそうしてくれたであろうかのように。私たち家族にとって深いかかわりのあった方を又一人失ってしまった。