姫はパリに行った

 研修でパリに行った。どこまで言葉が通じるかは分からないが、彼女なりに楽しんできてくれるだろうと思う。色んな忘れ物をしたけれどまあパスポートとお金さえあればあとは何とかなる。親分とどこかにいきたいねえと話す。彼は長崎に行きたいんだと。五島列島の昔の公教会の頃の建物を見たいのだそうな。わたしはスペインに行ってみたいな。絵の具と紙を持って。言うだけならただなので、今夜はささやかに二人でのみに行こうとバスで町に行った。夜の街は忘年会の人たちでごった返していた。お酒を飲んでまで何で仕事の話をしているのかなあと思いながら、気が付けば私たちも似たような話をしていた。楽しい話をしようと思っているのに気がかりなケースの話になってしまう。美味しかったのは島根のお酒「渓」のきりりと冷えたもの。ぎばさを練りこんだおそば。たら菊のてんぷら。岩牡蠣の酢の物。つみれ鍋・・・・美味しかった。バスで帰るから早めに切り上げてほろ酔いで戻る。
 穏やかに一日が終わるなんて贅沢なことなのだなあと思った。久し振りにあの子の手触りを感じた。