夕方の風

 もうこれは秋の風ではないか。おどろいてしまった。肌寒いのだ。今年は蝉時雨もあまり聞かなかった。自然の中でゆっくりと軸がぶれていっているように感じる。自分の体の中になんだか季節がいつもの夏と違うよという感じがする。この星がいつかは消えていくにしても、せめて私たちの子供たちが自分たちらしい人生を歩みきってなお、幾世代かは残っていて欲しいものだ。ぼんやりと体に風を感じながらそんなことを思っていた。
 来週は姫の学校の文化祭で、また浴衣を着るとか言っている。浴衣はあるけれど腰紐をどの箱にしまったのか分からない。第一、私はその日はGSの研修で二泊三日でいないのだよ。姫には、去年特訓で浴衣の着付けを教えたのだけれど覚えていないらしいし。高校の文化祭って何でこんなにも甘酸っぱいのだろうね。街中の高校生がこのときばかりは遠慮無しに行ったりきたりして、きゃあきゃあ大騒ぎ。普段は敷居が高くて出入りできない私立も男子校も女子高もみな自由に訪問できる。あちこちでそれらしいカップルがいたりして面白いというか、かわいいというか。こちらはPTAの役員の立場から静かに見守らせていただいているのだけれど。おお・・・青春という気持ちになるよ。



 その後あちこち探して腰紐の入った和服の箱を見つけた。ばんざい。今日一番のうれしかったことだね。