三人のテレーズ

イエスの渇き

イエスの渇き

 カトリックの聖人の中に三人のテレーズがいる。大テレジアと呼ばれるスペインの聖人。小さき花と呼ばれるフランスの聖人。そしてその名を修道名としたマザーテレサ。この三人の神学的なかかわりを明確にしたのが『イエスの渇き』と言う本。小さな本だが、弱者にかかわりながら自分の生きる道を模索する人のためには良い同行の書となると思う。特に私にとって衝撃的だったのはマザーテレサの抱えていた心の闇のこと。誰もが信仰の中にいてさえなお、心の中に闇の支配を感じる。その苦しさを耐えながら光の中を歩もうとする壮絶な生き方に強く引かれた。小さきテレジアもまた同じ苦しみを生きていた。私たちがあっけらかんといつも同じ信仰を語れるわけではない。もはや信じているのかいないのかは分からないけれど、それはぎりぎりの深い淵に突き落とされるせつなはっきりするのだと思う。たとえ安穏と信仰を感じていなくても、もし今、信仰か死かと問われたら、自分がどちらを選ぶのかは自分自身でも分からない。その危うさの中にありながら、なお今この現実の中でキリスト者としての歩みを選び取って生きて行くのが、ありのままの私の姿なのだなと改めて思う。