ないものはない

 さあ元気になれ、と言われてもない元気は出せない。元気であってもらいたいというのは一方的な思いかもしれない。心のどこかに元気が嬉しいのは親の都合でしょと言う声がする。親の手を煩わせることもなくさくさくと自分のことを片付けてゆくのは確かに親の元気につながっていく。子供に助けられた気持ちになっても致し方ない。時々親の思惑とは外れた方向に子供が転げて行く時、親は自分を責める。自分が何かこの子を壊したのではないかと。だけどそう思う反面いくら親だからと言っても子供を思い通りに育てることなど出来るはずもないこともわかっている。無力な人間が限界まで頑張っても出来ないものは出来ない。子供であっても自立した一個の存在なのだ。思い通りになるはずもないことを胸に刻んで、子供の人生が苦しみの少ない喜びに満ちたものであって欲しいと願う。
 それをしっかりと胸に収めて子供に「かくあれかし」と思ったとき「ないもいのはない」と言える自分も保っていたい。