何処に行ってもいいから

 ママがだんだん自分の世界だけに生きるようになっている。認知症が進んできて私達の世界と自分の世界の境界線が見えてきた。今どこにいるの?何を見ているの?何歳なの?ああどこの時間をママはさまよっているのだろうか。誰を求めているのだろうか。亡くなった夫の帰りを待ち、これからの日々に不安を感じる。認知症のお年寄りが第一に感じているのは自分がどうなってゆくのかわからない自信のもてない不安。怖いと言う。どこかにさらわれていってしまう。自分のやることに安心できない。怖くてしょうがない。どうしてあげたら穏やかな日々が来るのだろうか。どこに行ってもいいからもう一度賢くて優しかったママに戻って欲しいと願う。ママがエイリアンになってゆく。星の女王様になってゆく。切ない・・・