ジョナサン

 去年の今頃彼は数学と悪戦苦闘していた。一年間大好きなデザインを中心に授業を受けてそれなりに伸びて、自分なりの世界も作りつつあるらしい。映像を専門にやりたいらしいが案外むいているかもしれない。大学の作品展が開かれると言うので時間をやりくりして行ってみようかと思う。
 一度大学を中退して進路を変更して再度自分の可能性を追求するこの一年は逃げ場の無い苦しさと、覚悟の一年だったと思う。それなりに、自分の可能性の核心に近づくことが出来た一年だったとも思う。逃げ出そうにも逃げられない所に自分を置くのは苦しい。しかし生涯に一度や二度は自分を厳しく鍛えなければ次が見えない時期がある。そのチャンスを再び与えられた事は感謝すべきだ。
 若いということはそういうことの為の時間なんだと思う。皆そうやって自分の能力の限界を知り、限りなく続くように見えた道が実は限度のある時間、限界のある能力とチャンスだと気が付く。其れを最大限有効に切り札を切ってゆく事で人生は変化してゆく。 
 ジョナサン、人生には無駄な出来事は何一つ無いよ。例えその時『これさえなければ』と思うことが有ったとしても、時間がたてば必ずその布石は生きてくる。無駄な事は無い。だから時間を大切に。
 ギュダ君の鶯が今朝も鳴いていたよ。あのこの短い生涯が今私を前に前にと進める力になっているよ。