毎朝メールを

天使みたい

 チェックすると「生きていたくありません」とか「死ねません」とか其の類の苦しいメールを夜に送ってくる人がいる。毎朝「今日一日生きてごらん」と返事を書く。私ができることはわずかな事だ。自分自身が今日一日の中でどんなことに喜びを見出しているか、何が嬉しかったのかをさりげない言葉で相手の心に注ぐ。私は人間にしかすぎないから神のように降り注ぐ事は出来ない。ほんの一滴の安らぎでしかないが、それでも一息つくには何とか間に合うのだろう。あけてもくれても一日が生きることを呪う言葉で始まる事は私自身にとっては決して楽しい事ではない。何時まで経っても其の言葉は私にとって衝撃を与える。なれる事は出来ない。それでも「優しくしてあげなさい」と自分に言い聞かせる。
 かつて私も理不尽に人に救いを求め応えてもらったことがあった。私が今ここにいるのも沢山の優しさに支えられた体験があったからだ。今度は私がお返しをしてゆく。ペイ・フォワードだ。「只で受けたのだから只で与えなさい」金銭の事ではない。見返りを求めずに愛してくれた人がいたから私は生きていられた。今度は私が誰かを支える。其の人が立ち直ったら、今度はその人が、誰か倒れそうな人を支えてゆく。人間はそうやって互いに手を携えて長い年月をつないできたのだ。誰かが諦めても、他の誰かが手を離さない限り命の連鎖は途切れない。だから諦めないで兎に角今日一日生きてみようよ。止まない雨はない。あけない夜はない。人生は何時場面が転換するか分からない。朝早く、今日もそんなメールを返した。
 さあ今日も一日やってやろうじゃないの。