TVとのずれ

 このごろたまにTVを見ると、出演者たちのテンションの高さに唖然とする。声の高さ、リアクションの大きさ、感情の波の激しさ。普通の人間が日常生活ではトンとお目にかかるはずもないハイテンション。私のクライエントの中に、人と交わるとき相手のテンションで交わる事が出来ず自分は駄目人間だと思い込んでいる人がいるが、人間の自然なテンションはかなり低めに設定されている。それでは目立たないからこんなに大騒ぎをするのだ。丁度サルの檻でいきなり網につかまって声を上げて檻を揺さぶるサルがいるが、あの状態だと思う。だから本人も何時までも其の状態をキープする事は無理でさまざまな方法をとったり、場面場面で自分を使い分けているのだ。それを知らないで「私は暗い」と悩んで病気になっている人が多い。特に若い世代に多い。ネクラと言う言葉がかつてあったが今はそれが人間失格のシンボルのように人間関係の基礎の部分に浸透している。誰もが明るく華やかに話し、笑えるわけではない。人にはその人なりの表現の幅があって当たり前なのだから。時々マスメデイアが発達していなかった時代、自分が自分らしくあっても評価されなくてすんだ時代の心の問題と、今の心の問題とはもっと異なっていた事を思う。マズTVのスイッチを切って音や映像を遮断して静かに一日を始めてごらんと言ってみる。一日何度か私たちは人工のものを全て断ち切って「自然の一部としての自分」を取り戻す必要があるとのではないだろうか。
 自分の居心地の良いテンションの高さの確認から始めてごらん。もう一度私であることから始めてごらん。無理する事はない。繰り返し私はそう伝え続けている。