スナフキン

 夕べ11時に戻ってきて「下にタクシー待たせているから」と下着を持ちYシャツを着替えてまた会社に戻っていった。その間10分。ワタワタと入ってきてワタワタと出かけていった。
 かつて同じ業界で私自身が同じような働き方をした体験がなければ、とても理解できない働き方だと思う。納期に追われてバグが出たり、他のチームの担当のルーチンがこけると其のプロジェクト全員が駆り出されて滞った部分を修正し、納期に間に合うように仕事を上げなければならない。計算機業界は、こんな風にして若い頭脳労働者の睡眠と、家族との暮らしを犠牲にした肉体労働で成り立っている。結婚して子供がいたらとても勤まらない現場だ。トップがいくら収益を上げている、資産がいくら増えたのと言っても、若い現場の人間はこんな生活の中で、遊ぶ気力も体力も時間も持たず、下手をすれば「過労と追い込まれ状況」から欝になって薬を飲みながら働く事になる。そして退職に追い込まれてゆく。何人の若者が倒れて行ったか、いい加減業界は現状を改めなければ今に取り返しの付かないことが起きてしまう。過労による自殺は人事ではない。
 そんなもんだよと、人間が使い捨てられている業界は此処だけではない。非人間的な働き方をはらはらしながら観ている家族はたくさんいる。人間を使い捨てにする、使い切ってしまう労働現場がなくなることを願っている。無理だろうなあ・・・と思いながらも。なぜならそれが個人のレベルで始まる労働だからだ。根っこが個人であるから突き詰めていくと独りの担い手にたどり着いてしまう。クリエーターも、物書きも結局そこで身動きも代替もできないと言う事になってしまう。オンリーワンの錯覚だ。コレは怖い。