思い出してしまう事

mugisan2016-04-16

九州の姿を見てしまった人たちが、又あの日に記憶を引き戻されて、眠られない夜を過ごしている。映像に吸い寄せられるように、なぞってしまうのはあの日の自分たちの姿だ。逃げまどい、あてもなく探し回った家族のこと。何が起こったのかは当事者自身がわからないまま、私たちの姿もこのように報道されていたのだろうな。深夜の時間眠れない人たちの話を聴く。話しながら気持ちはあの日々に戻っているから、慰めようもなくただ傍にいる。揺さぶられ、悲しみに暮れ、恐怖におののく。 
「今・ここに」に戻ってこい。現実のあなたはあの日からもう5年生きてきたのだよと思いながら、ただしっかりと傍にいる。眠れない夜はきっと朝につながっていいるのだから。

私も又あなたと同じ恐怖を知っているよと言葉を飲み込む。たとえ同じ状況を体験していても、体験の恐怖は各々異なる。同じとか、わかるなんてことはない。わかりえないあなたの空気を私も又今、身をさらして嗅ぎ分けようとしている。その気持ちの方向だけが共通している。そのことにおいて、私はあなたの心のつぶやきを聴く者としての居場所を許してもらっっている。


聴く者も又いつか自分の心を自分の言葉で手渡せることが大切なのだと思うのだ。私もまたあなたの言葉で傷をえぐられてゆくから。其れであっても今は私の言葉は蓋をしておかなければならないときだから。いつか私の言葉に羽根を与えるときが来るまで。ケアするもののケアをまた再び始めなければならない時が来たと感じる。