イースターエッグ

青葉山夕景

 姫と二人で今年もなんとか差し上げる分の絵付けを完了。あまりに早く取り掛かるとゆでたまごなので腐ってしまうからタイムトライアル。いろんなパターンがあって、凝った柄は最初から中身を抜いて飾ることに徹する。何となくそれは私の方向性と相容れないから、本来の卵の姿のまま、私の復活祭の卵は、どのみち殻をむかなければ食べられないのだから、壊れることを前提にして一生懸命に絵を描く。たとえそれが手渡してすぐに壊されるものであっても、一番きれいなものをさしあげたい。そう思って描く。喜ぶ顔が観たい。それだけなのだけれど。今年もたくさんの笑顔に出会えて幸せだった。


 伝統のパターンがある。そのための専門の道具もあり、専門誌もある。見事なデザインでうっとりするくらいきれい。模様一つ一つに意味があり、わかる人にはわかるんだなあこれが。これはもう丁寧に中身を抜いてきれいに洗って乾かしてじっくり時間をかけて染めて、描いて、削ってと、作業工程も工芸品並み。いつか、きっといつかやってみようと思う。「いつか」が来たとき目や指が自由に動くかどうかは疑問だけれど。


 このところの寝不足がたたって座ると眠くて仕方がない。自分の言葉として「もう若くないな」とふっと出てしまい、ギクリとした。そして思う、後何度、こんな春を過ごせるのだろうか。夜、出来上がった卵をもって家族が亡くなって一か月目の友人宅を訪問する。部屋に花が溢れていて、主を失った家族の心の痛みを感じた。