あたかも何も起こらなかったかのように

 心に重荷を抱えていても、あえて、あたかも何もなかったかのように相手と向き合うことはできる。一日だけでもよい。それが無理であるならば一日のうちの小さな単位の連続でもよい。
 


 とにかく、今この状態が永遠の別れであったなら、お前は後悔しないのかと、自らに問う。分かれた後に、どんな言葉をかけてももはや取り返しはつかない。その苦しさと、たった今の怒りを同じ天秤にかける。この気持ちの収まり場所を自らが抱えるのか、相手に投げかけるのか。死に別れてしまうことがもたらす断絶は、相手に手渡せなかった詫び状のつらさを意味する。もはや同じ過ちは繰り返したくない。


 あたかも何もなかったかのように、自分の怒りや悲しみは、自分の心の中で沈めていきたい。この頃特に強く思うようになった。