いとおしい者たちに

海岸段丘で

 失われていった命を思う。いとおしく、悲しい記憶を思い起こす。日常に埋もれてゆくことによって、あたかも立ち直ったかに見えても、心に深く刻まれた痛みは今もうずく。時には思い切って閉めた扉を開けて、じっくりと悲しみに向き合うことも必要。


 いとおしい者たちと共に生きてきた記憶を、時々そっと開いてみることをためらう必要はない。かつて共に過ごした時間をいつくしむ。その中に生きていた自分自身とも出会う。過ちをただし、わびることを恐れない。もしあの時この余裕があれば、あのことは起こらなかったのではないかと思う。苦しければ苦しいほどに、それを癒す力は自分自身にあるのだから。幾度でもその場所に立ち戻って、無力だった私を抱きしめよう。慰めは自分の中にある生きる力によって生み出されるもの。外から誰かが持って来はしない。