そして歌おう

陽が沈む

 年度末だから、会計報告の準備をしなければならない。あたふたと数字を並べながら,
数字の裏にある過ぎてきたこの一年のこと思い出している。総会の資料を作りながら、この時はこうなるなんて思わなかったことどもが思い浮かぶ。このときいた人がもういないということが、もはや日常になってしまったからかもしれない。何も思わず、何も知らずただこの行事を遂行することだけ考えていた。その人たちの心中を察することもせず、何も思い至らず。


 来年度はどうなるのか、私たちはどこに行くのだろうか。去ってゆく人が「震災以後、生活の状況が大きく変わってしまった。もう踏ん張れない」「自分の暮らしを立て直すので精いっぱい。もう私には、余力はない」みんな同じと思いつつも、その言葉に返す言葉は何一つなかった。「わかりました。おからだお大切に」とつたえるだけで精一杯だった。


 これは当たり前のことだ。「あの震災の後、自分の生活を立て直しながら、ボランテイア活動をして、やっと皆がそれぞれに一定の方向を見出せる時期が来た。これからは私の生活を考えさせてほしい。もうこれ以上二足のわらじははけません」というのは誰に責められることでもない。当たり前の気持ちだ。私たちも又生活者であり、被災者でもある。

風が吹いている。今は風に向かって、自分が歌える歌を歌おうと思った。