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いのちへの答え―傷つきながらも生きる

いのちへの答え―傷つきながらも生きる

副題が「傷つきながらも生きる」白百合女子大学の星野正道氏の本。フランクルを引用しながら、カトリック的な立場からの人生の歩き方について考察している。内容は平易な言葉で表現されわかりやすい。弱者の立場で、傷つくこと、生きることを見つめている。時間がないのでまとめ読みはできないが、裁かず、見守る視線が心地よいと感じた。


 私がかかわっている人たちは、さまざまな障害を抱え、社会的にも弱者であり、それでも一人の人として生きてゆくことを意思として持っている。幾度か未遂を繰り返し、死のうと試みることに疲れはてて、もう少し生きてみようかという人もいる。生きることは決して楽なことではない。しかし、苦しいことだけでもない。ほんのひと時、あたかも雲の切れ間から光がさすように、小さな喜びが訪れることがある。それがあるから、人は今日一日の悲しみや苦しさを耐えて、生き延びる。


 刹那のこの喜びがほしくて、愚かな行為に身を投じる人もいる。時間はすべての人の上を通り過ぎてゆく。そして決してとどまらない。逆戻りも出来ない。いづれ自分の人生の決算をするときは来る。その時、胸の中を満たしてゆくものがなんであるにしても、私たちはその責任を取らねばならない。振り返って自分に「よく生きたね」と言って締めくくれたらそれはそれだけでもういいと思う。誰かを悲しませたり、誰かを傷つけたままで幕を閉じることだけはしたくはない。詫び状を書き、届けるだけの時間が最後にあることを願う。