文字を書くのが好きだ

 書きやすいペンと書きやすいノートがあればそれだけで一日過ごすことができる。私は子供のころから文字を書いたり読んだりするのが好きだった。育った環境がわりと厳しかったからそうやって自分の周りにバリヤーを貼り回らすことで自分だけの世界を作っていたのだと思う。子供の時いつも一人で物語の中に住んでいた。
 大人になって少しづつ壁が低くなっていき、やがて自分で扉を開け閉めできるようになった。今でもよほど苦しいときはそっとサンクチュアリに退くことがあっても、出るべき時、開くべき時は自分で外に向かって扉を開くことができるようになった。
 それでもノートに向かっているときの自分はここにいてもここにいない感じがしている。誰もが他者に踏み込まれてはならない、自分だけの場所を心に持っていることが大切だとSr.渡辺和子は言う。それは修道女だけのことではなく、むしろ世間に生きている私たちが心の平安を保つために必要なことなのだと思う。自分の心の平安を何とか自力で保つことは大事なことだと思う。それは一人の人としての自分を大切に思うことだから。