81歳になられた

壁をバックにちょっと気取って①

 別に熱烈な皇室ファンではない。ただこの方の人生を見るとき一本明確な筋道が見える。夫婦として文字通り支えあって歩んでこられた姿は、はたから見ていて大変な努力をなさったのだろうと思う。
下々の私たちにはわからないお立場上の悩みもおありだったのだろうが私たちの暮らしとさほど変わらない夫婦の関係性の中での苦しみもないはずがない。
 家族として親の代に起こった戦争の影を背負いながら、あたかもさらりと全身で受けていくような時代の風の受け方はお見事。人として魅力ある方だと思う。
 もがき苦しみながら夫婦はともに関わりどころを発見してゆく。熱烈な愛情がいつも燃え盛っているわけではないだろう。長い年月を経てある時はあきらめるしかないこともあるし、ある時は怒りをぶつけることもあるだろう。そのすべてを飲み込み、かつ相手にゆだねられるのは、根底に人としての品位があるからだと思う。
 現実を知らないからだという人もいるだろう。たとえそうであってもこのご夫婦には希望があるなと感じる。夫婦の姿としてはぎとってもはぎとってもはぎとり切れないお互いにいたわりあおうとするゆとり。個人が強靭でなければいたわりは生まれてこない。単体として成熟した人間同士がユニットを組む時、互いの存在を肯定しつつ、互いに成長できる。未熟な人格は、まず一番身近な存在をたたき壊さなければ安定できない。