マザーテレサ

 買ってきた本を読んでいる。切なく痛い。しかし、この本が何のために公表されたのか読むほどに腑に落ちる。信仰者として生きるためには多くの魂がこの闇を抱え闇に生きざるを得ない。そこで鍛錬され、削り落とされ、傷みの中に新たに生まれ代わってゆく。どうしても受難を経なければ歩きとおすことはできない。
 しかし、今までほとんどの人はその事実を非常に個別のものとして、自ら扉を立てて、口を閉ざしてきた。あのマザーテレサでさえと思うが、すでにこの闇については、彼女の保護の聖人であるリジュの聖テレジアが自叙伝の中で繰り返し表現している。その名を修道名として生きたマザーテレサが、自分の保護の聖人と同じように自らの言葉で、心の闇を一般の人にわかる言葉で残してくれているのは、神の計らいであるように感じる。
 そのことを彼女自身も自覚していたし、彼女の周りの霊的指導者も知っていた。現在進行形で一人の人の心の旅が完成され集結してゆくのを体感することの不思議さ。同時期に生身で出会うことができたことのなんと大きな恵み。かつてこの手で触れた人の圧倒的な言辞