石巻日和山から海を見る

石巻日和山

 TVでお馴染みになってしまった石巻市日和山の景色です。この海が溢れて多くの人の命を奪っていった。今はただ桜の花に包まれて美しい穏やかな風景です。
 あの日、小高い場所に神社があってその麓は一面の水で陸の孤島になってしまったそうです。文字通り島になったかのようだったと友人が言ってました。その人の家はここの地名です。本人は麓にいて津波に巻き込まれ散々な目にあって、また麓の市街地に職場のあったご主人は合同庁舎に避難して結局ボートで救出され、夫婦が巡り会えたのは三日後だったそうです。その間電話も通じないし何もわからず、お互いに生きていることは考えられなかったとか。沢山の人が同じような体験をしたのです。とてもそれは忘れられるようなことではないし、忘れてはいけないことのように思います。
 まだ言っているのかという人がたくさんいますが、他の土地の人には過去になってしまったことであっても、被災した人たちにとっては今尚、現実なのです。日本の中でのこのギャップがもどかしく、かつ絶望的な気持ちにさせます。
 いつまで語るのか。そう問われればすべての被災者が元のように人生を送れるまでと言いたい。福島の悲劇、三陸の悲劇、仙台市で起こったこと、北関東で、内陸で起こったこと。その全てが穏やかに収束して、また不安を感じないで今日一日を送れるようになったらこのことは過去の事実になるだろう。今はまだ現実そのもの。逃げ場のない生活そのもの、人生そのもの。それを東北三県のあんたたちばかり恩恵をこうむってズルいと罵ることは、人の道ではないと思う。
 悲惨さを映像で見て「もう見飽きた」と言われるたびにやりきれない深い悲しみが胸を突き抜けていく。