ヒヨちゃんは

 今朝もまっしぐらにりんごを食べに来る。「ごはーん」と声高らかに歌いながら雪の中をまっしぐらに飛んでくる。今日も元気だ!
 今日は一日降ったりやんだりを繰り返すようだ。地震のあともそうだった。寒かったな。簡易カイロが有りがたかった。こんな厳しい天候に出会うとあの日のことを思い出す。あの時、灯油もなく電気もなかったから暖房がなかったのに生きていること、この一日をいかに過ごすかということ、友人知人の安否を確認すること、明日何を食べることができるのか、灯油の確保、ガソリンはどこで買えるのか。それが最大の関心事だった。暮らしが大変だった、寒さが大変だったは、それほど重大なことではなかった。自分たちが生きていることが最大の恵みだったから。他のことは欲しがらなかった。
 ひよちゃんはこんな暮らしを生涯続けていく。今、食べ物があるか、今、暖かい寝床があるか。そのことになんの疑問も不満も持たない。人間は過去、現在、未来を知るがゆえに不幸せなのかもしれないな。