雪だるまが

 天気予報にちらちらすると、子供のころはあんなに喜んだ雪が、違う物のように感じる。もう一度無邪気に雪の匂いをうっとり嗅いでドキドキする日を持ちたい。遠い日の遠い記憶にほっと灯が燈ったようなそんななつかしさ。子供時代が未だ自分の中に息づいていることを愛しいと思う。
 日ごとの生活に埋もれていく過去の何とひそやかなことだろう。小さな種のように心の中に沈んでいって何時か芽をを吹く夢がある。
 人生はそんな小さな恵みで満ちているのだと、逝ってしまった命たちと分かち合いたい。ささやかなことを、ひそやかなことを分かち合いたい。旅立っていった命たちがあたかもここに共にいるかのように感じる。思いの中で通い合いたい。
 祈りがもたらす安らぎは、命の岸辺を隔てることなく交じり合う一瞬の喜びだと思う。奪うことも奪われることもない、緩やかに手渡せる物があるとすれば祈りであろうと思う。