一息

「馬上のあの人」黒川晃彦

 怒涛のように原稿を書き、話をして一晩たってあれでよかったのかなと胸に収まった。あれ以上の準備は出来ないと思った。至らなければ至らないままにそれが今出来る精一杯のことだったな。
 今回のS学園の講話で伝えたかったことは、今日一日、今を生きることの大切さ。
 希望を見失わないこと。フランクルのロゴセラピーの話をした。今私が伝えられる最も大切な生きる力。
失ったものに振り回されず、当てにならないものを当てにして裏切られないように、今をこそ手に握り締めて守る。 今を生きることがどれほどに困難で真剣さを必要とするかを思う。そしてこの日々を生きて行くためにはその覚悟が必要だと思う。


息を吐く
長く細く息を吐く
深く吐く


息を吸う
静かに静かに息を吸う


零れ落ちる砂のように
形のない記憶の体積
一息また一息