仙台駅裏の

残っているのが不思議な店

再開発地域に一軒残っている古い瀬戸物屋。売っている物は決して今風のものでもないし、高価なものでもない。区画整理で周りには最早ほとんど昔の店は無い。二十人町と呼ばれているこのあたりは昔は色町だったそうな。二階の手すりに身を寄せて、上からからお姐さんが「ちょいとお兄さん」と声をかけて成り立つ商売をしていた場所だそうな。時代は変わって今、建設中の道路とその傍に「アンパンマンミュージアム」の建物が出来上がりつつある。そんな新しい街づくりの真っ只中に、置き忘れられたような瀬戸物屋がある。地震の影響をまったく感じさせない其の店構えに思わずシャッターをきった。
 こんな当たり前の風景が胸にきゅんと来る。普通であるということの何と心穏やかなことか。
 見回せば、周りは傷つき痛んだ風景ばかり。地面も壁も崩れている。道路はうねりひび割れている。
 その中にあって、ひとびとはもはや地震津波も済んでしまった過去の出来事であるかのように暮らし始めている。春らしく着飾って、もしくは忙しく小走りに、仕事やショッピングをしている。自粛しないで消費活動をしましょうというけれど、うきうきすることがどうしても出来ない。ささやかに福島さんの物を買ったり、福島本店の店で食事をしたりするくらい。