親分

 今まで彼が植物にこんなにも興味を持つなんて思わなかった。知識があるのは知っていたけれど、花が咲けば写真に撮り、切り取ってコップに挿し、愛でる。私がひとりでベランダに花を育てていたときは眺めているだけだったのに、ひとたび自分が育て始めたら花の株がどんどん増えている。植物を育てることは人を優しく注意深くする。
 あくせくと日々緊張の中で生きてきた長い時間の果てにこんな豊かな時間があることは恵みなのだと思う。人が人生の終わりに土に牽きつけられるのは無意識にそれを求めているのかもしれない。祈りに似た物を感じる。人は土に還る。生き物すべてがそうであるように。