最終日

暑かった日がもうすぐ終る

 一度開いた心をまた日常に戻す作業をする。心が鋭敏になっているから、この作業を怠ると思いもかけないダメージを受けることになる。わたしはいつもこの最終日を大切にするが、ほかのスタッフはあまりそのことを意識しないようだ。兎にも角にもこれでこの三日間の研修が終わり、訓練は第二ステージに入る。
 果たしてこれで一人一人が自己と出会い、自分の心の中にある今までふれることのなかった扉を開けたのだろうか。自分の担当した人たちの心の変化を見ていると、なかなか自分に出会うことができない人がいるものだと思う。知識が邪魔をしていちいち心の動きに解説を加え分析をする。その時点ですでに心は過ぎ去って行き姿を変えてゆく。現象学的に過ぎてゆくその刹那の感覚を大切にして欲しいのだが、かたくななまでに知識に身を委ねていくのだなあと思う・・
 夜やっと帰り着いた。明日スーパーヴィジョンがあるが、このままおシャープな感覚を持ち込んだら辛いから、わたしもまたわたしの扉を一旦閉ざそう。心を沈めて・・・こんなときは夜の闇に包まれるのがよいのだろう。ざわめきが遠のいてゆくのを待つ。