夕方

 住まいの傍に消防車が沢山来た。煙は見えないけれど何があったのだろうか。この状況で頭に一瞬 硫化水素 の文字が躍る。連鎖を呼ぶので報道をしないという話を聞いた。そうでないことを願いながら、点滅する緊急車両の赤色灯を観ている。
 誰も犠牲になりませんように。哀しいことが起こりませんように。火事であったなら被害が最小限で終わりますように。このところ、この街も殺伐とした事件が多い。いつの間にか通り魔、不審者、放火、駐車場荒らし、ドラッグ、殺人事件がありふれた文字になってしまった。そこに現れる人物像がかつて同じ学区だったり、顔見知りの誰かにつながる人だったり、狭い地域の出来事だけに胸が痛むことが多くなった。
 地方の中核都市であったものが、交通の便がよくなって、人間の移動が多くなって、さまざまな社会事情の変化の中で、ゆっくりと街が変貌している。立ち並ぶ高層マンションの建築ラッシュで購入者はこの町の人とは限らない。定年後の生活を求めて新しくやってくる人たちも多いと聞く。企業支店ビルとマンションのハザマで地域住民の生活が変化していくのは無理からぬこと。郊外に隣接した場所に自動車メーカーの巨大な新拠点が予定されているとも聞く。街は休みなく変貌し、そこに住む人々の生活もまた変化せざるを得ない。犯罪は目に見える部分の変化なのかもしれない。もちろんよい評価も、変化も沢山あるのだけれど。
 ほかの街と比べたら、教育施設、文化施設、商業施設、自然環境などなどある程度以上の評価を受ける物であることは周知の事実。住みやすい街であるからこそ気になるこのごろなのかもしれない。