チェシャー州の猫

 子供のころから大好きだった。なんてことなくぼちぼち身の回りに増えてきた。気になって買ってしまう。親分が私の車を使うと、鍵をいつもジーンズのポケットに入れたままにするので、中くらいの尻尾をつけた。それでも使ったらズボンのポケットの中に押し込んで入れてしまう。その所為で猫の尻尾はよれよれになった。そこで狸の尻尾くらい太いものを買ってきた。私でも、さすがに鍵にくっつけるのをためらっている。
 デジカメをチェシャ猫のぬいぐるみバック(たぶんシガレットケース)に入れてショルダーバックにフックでぶら下げていて、ふと「ばかげてるかも」とつぶやいたら「やっと気がついたか」と笑われた。ピンクと紫の塊ってすごい色彩だよ。それでもかえって無くさないから目だってよいのかも。と強がってみる。大人気ないこと限りなし。
 以前はセサミストリートカーミットのぬいぐるみを車の鍵にくくりつけていた。どこに置き忘れても、落としても、必ず私に手もとに還ってきた。一度見たらみなが覚えてくれて、助かった。事務局でも有名だった。かぎ預かりボードにカーミットがいると私がいると誰にでも分かった。それが今はピンクと紫のシッポで認識されつつある。ジョニー.デップのアリスが今ブレイクしているが、それとは関係なく、私のほうが先行しているのにな。
 考えてみたら、その前の車の鍵はドナルドダック、その前の車の鍵はパデントンベアだった。歴代車の鍵はとんでもない物が目印になっているんだなあ。こぶしより一回り小さいくらいの、かなりかさばる物ばかり。こうでもしなければ私は小さな鍵は無くしてしまうのだ。電話みたいに呼べば答える機能が欲しいよ。